むし歯が嫌いです
2022年04月23日
こんにちは、歯科医師の今野です。
突然ですが、わたしはむし歯が嫌いです。
こう言うと、「でも歯医者さんはむし歯がなくなったら困るのでは?」と言われることがありますが、それにしてもわたしは、むし歯を見るたびに哀しい気持ちになるのです。
わたしは健康な白い歯が好きです。
あの白く光沢のあるエナメル質、機能性を完全に体現したあの曲線美を見ると、その美しさにため息が出るほどです。あの溝や突起、そのすべてに機能的な意味があるのです。
それがむし歯になった途端、黒く淀んで大きく形態を損なった姿と化します。
痛みを訴えるころには救いのない姿になっていることすらあります。
わたしたちは、むし歯を「治療する」という言葉を使いますが、治療をしたからと言って、完全に元の姿に「治る」ことは決してありません。
むし歯で汚染されてしまった部分を削り取って、代わりに詰め物を入れたり、かぶせ物を作って歯の形を補うことは、例えばインフルエンザにかかった人が治療をして「治った」状態というよりも、むしろ脚を失った人に義足を、眼を失った人に義眼を入れているようなものです。
もちろん、元の状態に限りなく近づけるように全力を注いでいますので、治療後は問題なく噛めるようになります。ですが、同部位が再度むし歯になった場合には必ず以前より深刻な状況になっていきます。
そういった意味では、本当の意味でのむし歯の治療は、「予防」しかないと言えます。
「他の歯科医院で抜歯すると言われた。自分は絶対に抜きたくない。本当に自分の歯は抜かなければならないのか?」
そういって来院される方も時折いらっしゃます。
その中には、何とかすればまだ残せるのに…
という場合もあれば、本当に救いのない姿になってしまっている場合もあります。
その度に胸が張り裂けそうになります。
大切な歯を失う哀しみは計り知れません。
もっと早く来てくれていれば…そう思うことがしばしばあります。
わたしたちは、むし歯や歯周病を未然に防ぐ「予防歯科」に力を入れています。
「別に痛みがないから、歯医者には行かなくていいか…」
そう思っている方こそ、いらっしゃってください。
むし歯ゼロの健やかな未来を共に創っていきましょう。